Mentha Spicata

自分がやったお仕事原稿のフォローアップなどを掲載していきます。

効率的なスクリーンショット作りを試行錯誤する その2:iOS編

分割するつもりではなかったのですが、前回のエントリが本人が思っていた以上に長く(というかすでに10,000文字超えているのに終わる気配がない泥沼化に)なってしまいましたので、プラットフォームごとに内容を分けることにしました。

今回はコンパクトにiOSです。氷川はマイナビさんから出ているiPad Fan ビギナーズというムックを2011年の冬から担当しており、通巻で3回ほどメインライターとしてお仕事をさせていただいています。

このムック初心者向けではありますが、実は初期セットアップのスクリーンショットをほぼすべて網羅していたり、手順をかなり細かくキャプチャして図版中心の構成で作ってあります。ページあたり最低でも4枚、総数は概算で600〜700枚くらい作ったと思います。かつ毎回ターゲットが、iPad 2(iOS 5)、iPad 3rd(Retina化)、iPad 4th(iOS6)と変わっていたこともあり、原則図版流用しないので重複する部分も新規で撮り直しています。

この他にもiPhone Magazineという雑誌で定期的にアプリのレビュー記事を担当していたりするので、日に20枚から多い時で100枚を超えるスクリーンショットを原稿と一緒に作成します。こういった作業には効率化が求められるでしょう。

簡単だけど多機能ではない標準機能

iOSデバイスのスクリーンショットの作成方法は非常に簡単です。ホームボタンとスリープボタンを同時に押すことで、現在デバイス上に表示されている画面を撮影することができます。

撮影されたデータはカメラで撮影された写真と同じように扱われるため、カメラロールの中に保存されます。ファイル形式はPNG、解像度はピクセル等倍です。iPad (3rd Generation)以降だと2048x1536ピクセルになるので、最低でも27インチiMac以上の解像度が無いと等倍で確認できないというRetinaディスプレイの威力を思い知れます(ファイルサイズも相応に大きいです)。

さておき、機能自体はシンプルに実装され、かつアクティベーションしていなくても撮影だけはできたりするので、初期セットアップ画面の撮影も可能になっています(ムックの一部もこれで撮っています)。また、作業中に「あ、今このショットは撮っておいた方がいいな」と思った時にすぐに実行できるのも魅力のひとつです。

しかしこの機能、いくつか問題があります。まずホームボタンとスリープボタンの同時押しが必要になるのでスクリーンショットの撮影は両手で行なう必要があります。画面をタップしたり、ドラッグしたり、もしくは他のボタンを操作しながらのインタラクティブな動作を撮影する場合には1人で行なうことが難しくなります。友達の少ない氷川には非常に厳しい条件です。

他にもカメラロールの写真扱いになるため、うっかりiCloudを有効にしていると便利なフォトストリームに自動登録してくれるので、プライベートと原稿仕事を兼用していたりするとフォトストリームの中が完全にカオスになります。

もうひとつ日本モデルには「マナーモードでもシャッター音だけはする」という自主規制に近い機能があり、これがカメラ撮影と同じAPIを(たぶん)使っているスクリーンショット撮影時にも同様に音が鳴ります。電車の中でスクリーンショットを撮りたいだけなのに、「えっ、盗撮!?」とか思われるのもアレですし、夜中に一人作業している時に部屋にあの音が響き渡るのも、何やら苦行に近い悲しみを感じるのは氷川だけではないはずです。

Organizerを使って作成

そんな標準機能の制約によって訪れる悲しみから救ってくれるのがXcodeです。Xcodeはアップルが提供する純正のIDE (Integrated Development Environment : 統合開発環境)ですが、単にプログラムするだけでなく、この中にあるOrganizerを使うことで簡単にスクリーンショットを撮ることができるようになります。

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Organizerに登録されたデバイスは、プロファイルがインストールされてデバッグが可能になります。その機能の中に「New Screenshot」というものがあり、クリックすればOrganizerの中で撮影されたファイルがフルサイズで生成されるようになります。Macの中にファイルが作成されるので、iOSデバイスで撮影されたものをいちいち転送する手間も省けるので非常に便利です。

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シャッター音もしませんし、若干のタイムラグはあるものの、iOSデバイスではできない速度での連射も可能です。Magic TrackPadを使えば、足下に置いてピアノのペダルのように踏んで撮影することもできるので、両手が必要な作業中のショットも一人で撮影可能になるかもしれません。

Xcodeを使用するには

これだけでも我々ライターには充分な機能を提供してくれているXcodeですが、そもそもこの機能はApp Storeにアプリを登録する際に必要な「実際にアプリを使用しているスクリーンショット」を開発者が簡単に作成されるために用意された機能で、結構古くからあるのですが、意外にライターさんや編集者さんに知られていないようです。

開発なんて畑違いだから…というのもあるのかも知れませんが、便利なツールを使わないで時間をかけてしまうのは勿体ないです。XcodeはMac App Storeから無料でダウンロードすることができますし、プロファイルを作成するために必要なのは無料のデベロッパー登録だけなので、Apple Developerのポータルサイト行ってさくっと登録しておくといいでしょう。所要時間は10分も必要としないはずです。

日本語のサイトも充実してきましたし、デベロッパー向けのツールはXcodeだけでなく、iOSシミュレータやQuartz Debugという便利なツールも使えるようになります。

余談。

いいことづくめに見えるOrganizerですが弱点もあります。ひとつは撮影に約1秒ほどタイムラグがあること。「ここだっ」と思ったときにクリックしても少し後の画面がキャプチャされるので、ニュータイプでもない限り事前にリハーサルが必要です。

もうひとつは必ずMacとケーブルで接続されている必要があるということです。この制約は消費中のバッテリーステータスのショットや、外部アダプタを接続したときの図版など、DockもしくはLightningケーブルが繋がっていない状態でないと撮れないものはキャプチャできないことを意味します。ニッチな制約に見えますが、意外なところで効きますので覚えておいて損はありません。また、ケーブルの長さに依存するためカメラアプリ系のスクリーンショット作りの際も若干の制約を受けます。

iTunesとの同期でさえWi-Fi経由で行えるご時世なのに残念な仕様です。が、実はこれXcode 4.2までは「Support Wirelessly Connected Devices(ワイアレスでデバイス接続をサポート)」というオプションがあったので問題になりませんでした。

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この機能が有効になっていると、Wi-Fi環境下であれば自由にOrganizer経由で撮影ができたので非常に便利だったのですが、4.3くらいを境にこのオプションが消えてしまいました。が、なぜか人によっては4.6の環境でも使えているらしいので、おそらくUI上から無効にされているだけで、以前のplistから設定を継承している場合には引き続き有効になるのだと思います(情報をお持ちの方は是非ご一報を)。

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本エントリーの図版で使用しているテキストの一部は、藤井太洋さんのGene Mapperをクリエイティブ・コモンズライセンスに基づいて使用させていただいています。